冠婚葬祭からビジネスシーン、さらにカジュアルな着こなしにも欠かせない革靴。男性の足元を彩り、その人の印象を左右する重要なアイテムです。
革靴とひと言でいっても種類はさまざま。見た目にわかりやすいデザインのほか、製法や羽根の違いなど多くあり、選択によって印象もガラッと変わるので注意が必要です。
そこで今回は、革靴ジャーナリストのくすみさんが、革靴の選び方のほか、カジュアルやビジネスなどシーンごとにおすすめの商品をご紹介します。
国内・海外の主要革靴ブランドの特徴や、革靴のお手入れ方法についても解説。お気に入りの1足を見つける参考にしてください。
革靴の選び方のポイント|サイズ感が大事!
革靴を選ぶ際にもっとも重要なことはサイズ感です。特にチェックすべきポイントは次の3箇所。
①足の甲:足の表面
②ボールガース:足の親指のつけ根と小指のつけ根のもっとも突出した部分
③ヒールカップ:かかと部分
上記の3箇所がフィットした印象を受けるサイズを選びましょう。きつくて痛みを感じる場合はもちろんNG。また、靴は履いているうちに靴内部が沈み込んで足に馴染むため、大きすぎるとその沈み込みでさらに大きく感じてしまう場合があるため注意が必要です。
ただし、中底とアッパー、靴前方のアッパーよりも外側にはみ出た箇所を指すコバの3点を縫いつけした後に、コバに表底を縫いつけるグッドイヤーウェルト製法を採用する靴は沈み込みやすいため、痛くならない程度にキツめのサイズを選ぶことをおすすめです。
なお、このあと紹介しますが、グッドイヤーウェルテッド製法はメンズの革靴に多い製法で、その丈夫さ故、少々硬い場合が多いです。
- 足の甲周りがしっかりフィットしているか
- 足の親指のつけ根と小指のつけ根のもっともも突出した部分がしっかりフィットしているか
- かかとがしっかりフィットしているか
革靴の種類|製法やデザインの違いについても解説
革靴と一言でいっても種類はさまざま。デザインによってフォーマル度なども異なるため、シーンによって適切な種類を選べるようチェックしましょう。
①革靴の内羽根と外羽根の違い
靴紐を止めている箇所を羽根といいます。この部分は以下の2種類があります。
内羽根式
靴紐を止めている箇所と甲の革がつながっており、内側で縫い付けられているのが内羽根式。
靴紐を通す箇所が内側に収納されているため、上品かつスマートな印象を与えるデザインです。後に紹介する外羽根式と比べるとフォーマル度が高めの仕様。
外羽根式
足の甲を外側から包み込むように羽根があり、靴紐を留めるタイプを外羽根式といいます。
靴紐を通す箇所が外側に向かってむき出しになっているため、比較的カジュアルな印象を与えます。そのため上で紹介した内羽根式と比べるとラフな雰囲気。
②革靴で多く見られる、グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の違い
革靴の底付けにはいくつかの製法があり、なかでもグッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法は革靴で多く見られます。その違いと特徴をご紹介。
グッドイヤーウェルト製法
中底とアッパー、裏革とコバをすくい縫いで縫い合わせた後、隙間をクッション性の高いコルクなどの中物で埋め、そのコバと本底を出し縫いで縫い合わせる製法。
作業工程が複雑かつ、使用する部品も多いため重量感のある靴に仕上がります。実用性が高くてタフですが、最初の履き心地は少々固め。
ソール交換がしやすいため、末長く履くことができるのも嬉しいポイントです。
マッケイ製法
アッパーと中底を直接アウトソールと縫いつける製法。
そのため屈曲性が高く、軽量で足なじみもしやすいことが特徴。ローファーをはじめとするスリッポンシューズなどで多く見られます。
③革靴のデザインの違い
革靴の印象を大きく変えるデザイン。多く見られる7つのデザインをご紹介します。
ストレートチップ
靴のつま先で革の切り替えが横向きに一文字飾りが入ったデザイン。
なかでも黒の内羽根式のストレートチップは、革靴の中でももっともフォーマルなデザインとされています。冠婚葬祭含めてあらゆるシーンで履けるため、1足はあると重宝するデザイン。
なお、一文字の切り替え以外にデザインがある場合は、カジュアル度が増しますので注意しましょう。
プレーントゥ
その名の通り、つま先に装飾などが一切無いデザイン。靴の基本形とされるデザインで、シンプルな見た目が特徴です。
見た目にシンプルなため、靴のシルエットや革質の良し悪しが如実に出やすく、作りの良否がわかりやすいデザインともいえます。
ストレートチップほどではありませんがフォーマル度も高く、ビジネスもカジュアルも履ける便利な1足。
ウィングチップ
つま先の革の切り替えが、翼(ウィング)のような形をしていることからウィングチップと名付けられたデザイン。この切り替え箇所のW型の穴飾り(ブローグ)に加えて、つま先にはメダリオンと呼ばれる穴飾りが施されています。
ビジネスでの着用も可能ですが、穴飾りが増えるほどカジュアルな印象に。また、冠婚葬祭の場での着用は、控えた方が無難とされています。
Uチップ/Vチップ
甲の部分にU字やV字の縫い目が特徴的なデザイン。革を縫い合わせる部分を「モカ縫い」といい、縫い合わせ方によってさまざまな呼び名があります。
北欧の漁師の靴やアメリカのモカシン、ゴルフ用のスポーツシューズなど、アクティブなシーンでの着用を前提とされています。外羽根式が一般的で、革靴の分類としては少々カジュアルな位置付けになりますが、昨今はビジネスでの着用も問題ありません。
モンクストラップ
ほかの革靴と異なり、紐靴ではなくベルトとバックルでサイズを調整するデザインが特徴。このベルトとバックルの数が1点のものをシングルモンクストラップ、2点のものをダブルモンクストラップと呼びます。
元々はモンク(修道僧)が履いていた靴からヒントを得たデザイン。靴紐は面倒だけど、スリッポンではカジュアルすぎる時におすすめです。フォーマル度は低めのデザインのため冠婚葬祭での着用は控えた方がベターですが、ビジネスシーンでは着用している人も多く、許容されていることが多いです。
ローファー
靴紐などがないスリッポンタイプのデザイン。サイズ調整ができない反面、脱ぎ履きしやすいのが特徴です。
ローファーは元々怠け者という意味もあり、一般的にはカジュアルな靴という位置付け。スーツに合わせるには少しカジュアルな印象になるため、ジャケパンスタイルやカジュアルな着こなしのドレスアップとして取り入れるのがベターでしょう。
革靴おすすめ25選|革靴ジャーナリストがシーン別に紹介
ここからは革靴ジャーナリストのくすみさんと編集部が、ビジネス・カジュアル・フォーマルのシーン別におすすめの革靴をご紹介します。
革靴おすすめ10選【ビジネスシューズ】
冠婚葬祭時ほどフォーマルでなく、ラフすぎてはマナー違反に当たるビジネスシーンでの靴選び。その絶妙なバランス感にマッチするおすすめ革靴を厳選してお届けします。
革靴おすすめ10選【カジュアルシューズ】
オフの日の着こなしを大人っぽくアップデートするのに欠かせない、カジュアルなスタイル向けの革靴をピックアップ。ジャケパンスタイルと好相性なものも多く、比較的ラフなビジネススタイルが許容される人にもおすすめです。
革靴おすすめ5選【フォーマルシューズ】
メンズ向けおすすめ革靴、最後を飾るのはフォーマルシューズ。冠婚葬祭のほか、特別なフォーマルさを求められるときにおすすめの革靴をご紹介します。
革靴おすすめ主要ブランド|国内・海外別に紹介
他モデルの革靴も気になる…。そんな人には、鉄板ブランドから探すのも1つの手。ここでは、国内・海外のおすすめ革靴ブランドについてご紹介します。お気に入りのブランドを見つける参考にしてください。
- リーガル
日本を代表する革靴ブランド。コストパフォーマンスの良い革靴が多く揃い、特にグッドイヤーウェルト製法のビジネスシューズがおすすめです。
1万円〜3万円程度でリーズナブルなモデルも豊富。また、40年以上高い人気を誇るモデルのウィングチップシューズ2235NAは、ブランドを代表する1足。 - シェットランドフォックス
上で紹介したリーガルが展開する上級ブランド。1982年にデビューして以来、トレンドに左右されず末長く履けることと、大人のしゃれ感を忘れない人へ向けて発信を続けます。
5万円〜8万円以上のモデルが主流で、洗練されたデザインのドレスシューズが多くラインアップされます。 - スコッチグレイン
革の質にこだわり、グッドイヤーウェルト製法で作られた本格紳士靴が3万円台で見つかるコストパフォーマンスの高さに定評のあるスコッチグレイン。
オーソドックスなデザインの革靴だけでなく、撥水効果のある革を用いた1足なども展開。現代を反映した機能的な革靴もラインアップされています。 - 鞆ゑ(ともえ)
「粋で、いなせな日本の美靴」をコンセプトに、革のなめし加工以降の工程を全て国内で実施する質実剛健な鞆ゑ。
グッドイヤーウェルト製法の革靴が3万円〜5万円くらいで入手できる他、デザインの種類も豊富。全国の百貨店でも扱いのあるブランドです。 - 三陽山長
紳士靴を中心とした高級靴や鞄、革小物などをトータル的に展開する山陽山町。上質な素材使いと職人による匠の技によるものづくりによって誕生する1足は、オーソドックスも一目でされていることが分かる美しい靴ばかり。
ドレスシューズだけでなく、コンフォートシューズやスニーカーなども製造されています。 - マドラス
マドラスはイタリアの靴づくりの伝統を踏襲しつつも、日本人の足型に合わせて快適な履き心地を追求するブランド。
1万円〜3万円程度でリーズナブルなモデルが多く、マッケイ製法で作られているのも特徴です。高い防水性を誇るゴアテックスを使用したモデルなど、ビジネスマンのデイリーユースには嬉しいモデルが多いのも嬉しいところ。
- クロケット&ジョーンズ
世界でもっとも多くの木型を所有するクロケット&ジョーンズ。1879年に英国靴の聖地と呼ばれるノーザンプトンに誕生して以来、トラディショナルな英国靴ブランドの1つとして高い人気を誇ります。
定番モデルはストレートチップデザインのオードリー。ビジネスシーンはもちろん、冠婚葬祭にもハマる万能的な1足は、包み込むような履き心地を楽しめます。 - カルミーナ
1866年にスペインのマヨルカ島ではじめたオーダーメイドシューズブランドとして誕生。クオリティが高く、見た目にエレガントな革靴が比較的リーズナブルに購入できるブランドです。
さらにモデルの数が非常に多いことも特徴。選ぶのはやや骨が折れるかもしれませんが、お気に入りの1足がきっと見つかるはずです。 - J.M. ウエストン
1891年創業のフランスブランド。最近では創業以来培ってきたクラフトマンシップに加えて、アーティスティックな一面を加えた新しいアプローチも図っています。
オーソドックスなデザインの中にどこかユーモアが効いていて、独特な魅力があるブランドです。定番モデルは180シグニチャーローファー。
革靴の正しいお手入れ方法
末長く履くことができる革靴ですが、そのためにはお手入れが必要不可欠。必要な理由としては、革素材が油分と水分を含んでおり、汚れや時間の経過によって乾燥が進むためです。
乾燥が進むと革本来の美しいつやが失われるほか、ひび割れなどが生じて履けなくなってしまう恐れも。これを防ぐためにも、日常的なお手入れ方法と定期的なメンテナンス方法、そして雨に濡れた時のケア方法をマスターしておくと◎。それぞれのお手入れ方法をご紹介します。
基本的なお手入れ方法
まずは履くたびに対応してほしいお手入れ方法、そして10回の着用を目安に定期的に行ってほしいメンテナンス術をご紹介。
①日常的なお手入れ方法
1日履いた革靴は、帰宅後にシューキーパーを入れて靴の形を保ちましょう。また、ブラシでブラッシングをして、付着した土やホコリをしっかり落としてください。
これだけで甲の履きジワが軽減できる上に、美しい状態を長くキープすることが可能です。特に履きジワは放っておくとヒビ割れにもつながるので、ぜひこの一手間を惜しまないでいただきたいです。
②定期的なお手入れ方法
10回程度履いたら行ってほしいお手入れ方法がこちら。
靴紐をほどき、シューキーパーを入れて、革靴用のクリーナーで汚れを落としをしてください。その後、革靴用のクリームを塗ってブラシでブラッシングをしましょう。さらにコットンのクロスなどで余分なクリームを拭き取ったら、基本的なお手入れは完了です。
汚れがなかなか落ちず、気になる場合は、プロの靴磨き職人さんに磨いてもらうのもよいでしょう。
雨で濡れた時のお手入れ方法
まずは雨水を拭き取り、風通しの良いところで陰干しをしましょう。雨水に濡れると、油分も流れ落ちてしまうため、クリーナーで汚れを落とし、クリームを塗ってしっかりと革を保湿してください。
また、革は水を吸って蒸発する時に収縮するため、シューキーパーを使って型崩れを押さえましょう。
1番の得策は、雨の日用のゴアテックスなどを採用した革靴を用意すること。基本的に革靴は雨に弱いので、その点はしっかり覚えておきましょう。
おすすめの革靴を比較する
まとめ
奥深い革靴の世界ですが、その基本の“き”を今回の記事でお届けしました。高価なものが多いですが、トレンド靴を選ばず、メンテナンスをきちんとおこなえば、長く愛用できるのが革靴の魅力。この機会にあなたもハマる革靴を探してみてはいかがでしょう?
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