いつまでも一緒に暮らしたい家族同然の猫ちゃんにずっと健康・元気でいてもらうためには、ライフステージごとに食事を見直していく必要があります。
7歳ごろから考え始めたいのが、シニア猫用のキャットフードです。シニア猫の体にあわせたカロリー量や栄養バランスで作られており、腎臓や下部尿路に配慮した商品も多く販売されています。
そこで今回は、獣医師の石井万寿美先生監修のもと、シニア猫の特徴やシニア猫用フードを始める時期、選び方などを解説します。
さらに、編集部が選ぶ、おすすめのキャットフードもご紹介します。いつまでも大切な愛猫の健康を維持するために、ぜひチェックしてみてください。
シニア猫用のキャットフードに切り替えるのは何歳からがいいの?
「愛猫が年齢を重ねてきたら、シニア用のキャットフードに切り替えるといい」といわれていますが、いったい何歳から切り替えればいいのか迷ってしまいませんか?
飼い猫の平均寿命は、約15歳といわれています。個体差はもちろんありますが、一般的には、7歳ぐらいからシニアと呼ばれています。
シニアになると、猫の体調もいろいろと変化するものです。
石井 万寿美
獣医師、作家
シニア猫に多い疾患は、慢性腎不全です。この頃から、飲水量が増える子もいます。
水をどれぐらい飲んでいるか、気をつけてあげてくださいね。筋肉量が落ちてくると、高いところに登ったりしなくなります。
愛猫の体調に合わせたキャットフードを選ぶためにも、日ごろから注視しておくことが大事です。
では、シニア猫の年齢になったらすぐにシニア用のキャットフードに切り替えなければならないのでしょうか?
石井 万寿美
獣医師、作家
気がついたら、シニア(7歳)になるわけではありません。
血液検査をしながら、腎臓値(BUN、CRE)を見ながら、切り替えてあげましょう。
6歳後半ぐらいから、ゆっくりと移行してください。
シニア猫用キャットフード|6つの選び方
シニア猫用のキャットフードを選ぶときの基準を6つ、獣医師の石井万寿美先生に教えていただきました。
愛猫の健康を守るため、キャットフードを購入する前にひとつずつ確認していきましょう。
①高タンパク質のものは控える
筋肉や内臓、骨、皮膚など体を作る栄養素であるタンパク質は、人間と同じように猫にも必要な栄養素ですが、シニア猫に与える場合は注意が必要です。
石井 万寿美
獣医師、作家
シニア猫の場合、高タンパク質のものは控えてください。猫が好きだから、といって安易に与えないようにしてくださいね。
シニアの猫は、慢性腎不全になる子が多いです。慢性腎不全の子は、高タンパク質を食べさせていると腎臓の糸球体(しきゅうたい)がつぶれるのでよくないです。
糸球体(しきゅうたい)とは、血液中の老廃物や不要物を濾過する役割を持つ組織です。糸球体に炎症が続くとやがてつぶれてしまい、慢性的な腎不全に陥ってしまいます。
猫はもともと腎臓が弱く、加齢によって内臓が衰えてくるシニア猫は高タンパクな食事を続けるとこの慢性腎不全になりやすい傾向があります。
シニア猫には、タンパク質の含有量が25〜30%程度のものがおすすめです。高品質なタンパク質が入っているキャットフードを選びましょう。
②安全性を重視する
毎日食べるキャットフードの品質が悪ければ、愛猫の健康が左右されてしまうこともあるため、安全性はしっかりチェックしましょう。
一見、日本は安全基準が整っていそうなイメージがありますが、2009年からペットフード安全法が施行されたばかりで、まだまだ基準づくりの途中といったところです。
アメリカやヨーロッパのほうがキャットフードの安全基準が明確にあり、検査もしっかりされています。
たとえば、アメリカでは「AAFCO(アーフコ:米国飼料検査官協会)」や「FDA(食品医薬品局)」といった検査機関が安全なペットフードの基準を定めています。
では、どの国のキャットフードを選べば安全性が高いか石井先生に聞いてみました。
石井 万寿美
獣医師、作家
猫を飼うという歴史があるところがいいですね。アメリカ、イギリス、カナダなどの先進国のフードが比較的安全になります。
③主原料から愛猫の好みで選ぶ
猫の種類や猫ごとの味覚によって、肉や魚の好みはさまざまです。飼い主が肉か魚を決めるのではなく、猫が好んで食べるほうを与えてあげましょう。
若いときに食べられたものでも、シニアになると好みが変わってしまうことがあるのは、猫も人間も同じです。好みにあっているか、定期的にチェックしてあげるのがおすすめです。
キャットフードで使用されている肉は、牛・ダック・鶏・ウマなどバリエーションが豊富です。味のためには肉の種類も大事ですが、もっと気をつけるべきなのが肉の品質です。
品質管理ができていないメーカーが製造しているフードで、ミートミール・家禽ミールと記載されている場合、骨や羽毛など、猫に食べさせたくないものが入っている可能性があります。
キャットフードを選ぶときには、きちんと品質管理が行われているメーカーの商品を選びましょう。
④アレルギーなどを考慮して添加物も確認する
食物アレルギーがある猫や持病がある猫は、キャットフードに入っている成分を必ずチェックしましょう。シニア猫の体に負担をかけないためにも、人口添加物や原材料の品質には気をつけておきたいところです。
キャットフードのパッケージに記載されていることが多い、グレインフリー・グルテンフリー・無添加・高品質プレミアムフード・オーガニックキャットフードについて、解説します。
きちんと違いを知って、シニア猫の健康をサポートしてくれるフードを選びましょう。
グレインフリー
米、小麦、トウモロシなど、イネ科の植物(穀物)が原材料に使われていないグレインフリーは、魚や肉類などのタンパク質を中心としたキャットフードです。
成分表示を見るときは、上位に魚や肉類などタンパク質が記載されているかどうかをチェックしましょう。
安全性が気になる場合は、魚や肉の種類まで明記されているものを選ぶのがおすすめです。人間用の食品としてなじみ深いサーモンやチキンが原材料のものもあります。
石井 万寿美
獣医師、作家
猫は肉食なので、グレインフリーの食事がいいですね。
下痢気味の子は、グレインフリーにしただけで健康なうんちになる子もいます。
デメリットは、価格が高いということ。総合栄養食でない場合もあるので、よく見て購入しましょうね。
※「総合栄養食」とは猫の成長に必要な栄養基準を満たし、新鮮な水と一緒に与えるだけで健康が維持できるように計算してつくられているフードのこと。
グルテンフリー
グルテンとは、小麦などに含まれるタンパク質の一種です。小麦アレルギーの猫に向けてつくられているのがグルテンフリーのキャットフードです。
グレインフリーとの違いはどこにあるかというと、含まれていない成分の範囲です。
石井 万寿美
獣医師、作家
よく似た言葉ですが、「グルテンフリー」とは、麦類全般が含まれていないことです。
無添加
キャットフードにには、品質の劣化や変質を防ぐ目的や、猫の食いつきをよくする目的のために酸化防止剤や着色料などが使われてるものがあります。
石井 万寿美
獣医師、作家
無添加のキャットフードとは、酸化防止剤としてローズヒップやビタミンC、Eが添加されるだけのものを指します。着色料なども含まれていません。
まったく何も添加物が含まれないというのは難しいですね。
完全に添加物が入っていないキャットフードはとても少ないです。ただ、危険な添加物を避けることは可能です。
無添加のキャットフードを探している方は、以下の添加物をできるだけ避けるようにしましょう。
- 亜硝酸ナトリウム
- フルビル酸カリウム
- 増粘剤・増粘多糖類
- BHA(プチルヒドロキシアニソール)・BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
高品質プレミアムフード
世間一般でいうプレミアムフードとは、「品質にこだわってつくられたもの」を指していることがほとんどです。
なかには、添加物の量を最小限に留めるだけでなく原料や製造工程の安全基準を人間と同じように設けた「ヒューマングレード」などという商品もあります。
しかし、ペットフード業界において、プレミアムフードとはイメージだけで、本来はまったく法的な規定がありません。どれがプレミアムを決めるのは、飼い主さんです。
石井 万寿美
獣医師、作家
三省堂の「大辞林」によると、プレミアムの意味は…「他の物より価値があること。高級。上等。高価。」となっています。
おそらく高級という意味で使われているのでしょうが、それは主観的なもの。飼い主さんは、「プレミアム」というワードに惑わされないようにしてくださいね!
オーガニックキャットフード
オーガニックとは、有機栽培、有機農業。また、その農産物。広く畜産品を含めた生産物のことです。
石井 万寿美
獣医師、作家
オーガニックのキャットフードのメリットは、材料が安心なのでがんや肝臓病などの病気になりにくいこと。
デメリットは、コストが高いことや、総合栄養食でない場合は栄養素に気をつけないといけないことです。嗜好性が高くない場合もあります。
オーガニックの認定基準は生産される国によって異なりますが、基準をクリアしたものにはマークがあります。
- 日本の製品:有機JAS
- イタリアの製品:FORZA10
- オーストラリアの製品:Australian Certified Organic
まずは有機認証のあるものを選べば安心です。しかし、このようなフードは多くないので、主原料がオーガニックかどうかで選ぶとよいでしょう。
なかには、主原料ではなく副原料にオーガニックな食材を使用しているものもあるのでよく調べてくださいね。
⑤猫の体調に合わせて総合栄養食、一般食、食事療法食から選ぶ
キャットフードは、配合されている栄養バランスの違いにより主に総合栄養食・一般食・食事療法食の3つに分かれています。
栄養バランスのことを考えると、主食として与えるフードは総合栄養食、おやつとして与えるフード一般食と、用途別に使い分けるのがおすすめです。それぞれ詳しく解説します。
総合栄養食
総合栄養食は、猫の成長に必要な栄養基準を満たしてバランスよく配合されたキャットフードのことです。
新鮮な水と一緒に与えるだけで健康が維持できるように計算してつくられているため、基本的に毎日の食事はこれだけでOKです。
総合栄養食と名乗れるのは、ペットフード公正取引協議会が定める試験基準をクリアした商品のみ。健康面で特に問題がない猫に主食として与えるなら、「総合栄養食」と表示されているフードを選びましょう。
猫の年齢によって必要な栄養素は変わってくるため、年齢に合わせた栄養素がとれるように調整されている、「7歳から」「シニア猫用」などと表示されている商品がおすすめです。
一般食
一般食は、総合栄養食に混ぜて与えることが多く、おかずのようなものと考えてください。
必要な栄養をある程度満たしてはいるものの、総合栄養食とは違ってこれだけでは猫の成長に必要な栄養をとることができません。一般食を与えすぎてしまうと栄養バランスを崩してしまうこともあります。
1日1回のおやつやご褒美として与えるといった補助的な使い方がおすすめです。嗜好性が高いフードが多いので、食欲不振のシニア猫に少しでも食べて欲しいときにドライフードのトッピングとして使うなどするのがよいでしょう。
食事療法食
食事療法食とは、食事の量やバランス、成分を調節することによって病気の療養をしたり、病気の進行を遅くしたりする目的でつくられたキャットフードのことです。
猫の病気で特に多い下部尿路疾患や肥満のほか、糖尿病や腎臓病用の食事などもあります。
基本的には、猫の病気に合わせて動物病院などから処方されるものなので、飼い主の自己判断で購入したり与えたりしてはいけません。
シニア猫はさまざまな病気にかかりやすいため、気になる症状があればまずは獣医師などに相談してみましょう。
⑥ウェット、ドライなど形状や食べやすさをチェック
キャットフードは、含まれる水分量によってウェットタイプとドライタイプの2種類に分けられています。それぞれにメリット・デメリットがありますので、愛猫に合わせて選びましょう。
ウェットタイプ
水分の含有量が多いキャットフードのことです。香りが強く、肉や魚の食感が楽しめるのが特徴です。
メリットは、食感が柔らかいので、噛む力が弱くなってきたシニア猫でも食べやすいところです。ドライタイプよりも消化がよいため、内臓機能が衰えてきた猫にもぴったりです。
水分補給代わりにもなるため、脱水症状が心配な夏場や、年齢とともに水を飲む量が減ってきた猫にもおすすめです。
しかし、ウェットタイプは一般食が多く、これだけで栄養バランスをとることが難しいのがデメリットです。日頃一般食をメインに食べさせている場合は、定期的に血液検査をして健康をチェックしてあげましょう。
石井 万寿美
獣医師、作家
ウェットタイプは猫にとって嗜好性が高いので喜ぶ猫も多いです。水分が多いので、下部尿路疾患や慢性腎不全の子たちにはよいでしょう。
デメリットとして、水分が多い分食べている割に太りにくいなどということがあります。総合栄養食が少ないので、購入されるときはよく確認をしてくださいね。
ドライタイプ
ドライタイプのキャットフードは、「カリカリ」などとも呼ばれています。水分量が少ないため保存性が高いのが特徴です。栄養バランスに優れた総合栄養食が多いため、普段与える食事として人気があります。
一般的なドライフードは水分の含有量が10%未満ですが、それ以外に水分量が25〜30%で柔らかめのセミモイストタイプ、ソフトドライタイプもあります。
噛む力が弱くなってきたシニア猫には、柔らかめの商品を選んであげましょう。もし硬くて食べにくそうなら、ぬるま湯でふやかしてあげるという手もあります。
石井 万寿美
獣医師、作家
ドライフードは乾燥しているので、経済的で総合栄養食も多いですね。そして栄養のバランスもよいので体重も増えます。
デメリットは、水分がほとんどないので下部尿路疾患などになる子が多いこと。水分補給を忘れずに!
シニア猫用キャットフードおすすめ23選|7歳以上中高齢期から15歳以上の高齢期まで紹介
ここからは、シニア猫におすすめなキャットフードをご紹介します。
石井先生のアドバイスを参考に、編集部がセレクトしました。
猫の好みの食感に合わせて選べるよう、ウェットタイプとドライタイプに分けてご紹介します。
グレインフリー・グルテンフリーの商品も含まれているので、食物アレルギーのある猫を飼っている方などはチェックしてください。
シニア猫用キャットフードおすすめ10選【ウェットタイプ】
まずは、シニア猫用のウェットタイプからご紹介します。
総合栄養食に加え、おやつやトッピングとしても活躍する一般食もセレクトしたので、目的に合わせて選んでください。
シニア猫用キャットフードおすすめ13選【ドライタイプ】
続いて、ドライタイプのキャットフードをご紹介します。総合栄養食をメインにピックアップしました。
シニア猫特有の病気に合わせた食事療法食もあります。愛猫の好みや健康状態に合わせて選んでみてください。
まとめ
シニア猫用のキャットフードの選び方について、獣医師の獣医師の石井万寿美先生の解説を交えてご紹介しました。
編集部がおすすめするキャットフードのなかから、お気に入りの商品は見つかりましたか?
愛猫がいつまでも健康でいてくれるよう、紹介した6つの選び方を参考にしてシニア用のフードを選んでみてはいかがでしょうか。