「登山を始めてみたいけれど、何を揃えればいいのかわからない」「専用の装備を全部揃えると高そうだし、最初は代用できるもので済ませたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。
確かに、アウトドア用品は決して安い買い物ではありません。しかし、登山装備は単なるファッションではなく、変わりやすい山の天気や環境から、あなたの命を守るための道具です。
適切な装備を選ぶことで、疲労感が劇的に減ったり、雨に降られても快適に歩けたりと、登山の楽しさは何倍にも膨らみます。逆に、不適切な装備で挑むと、楽しいはずの山行が辛い思い出になってしまうこともあります。
この記事では、初心者が絶対に外せない三種の神器の選び方から、服装の基本ルール、あると便利なグッズまで、賢い装備の揃え方を解説します。まずは必要なものをリストアップして、自分だけの相棒を探してみてください。
登山初心者がまず知っておくべき服装の基本
道具を買う前に、まずは登山の基本ルールであるレイヤリング(重ね着)について理解しておきましょう。
街での服装とは異なり、山ではいかに汗をかいても体を冷やさないかが最重要課題になります。見た目だけで選ぶのではなく、素材の機能を知ることが、快適な登山の第一歩です。
綿より化繊やウール素材を選ぼう
初心者が一番やってしまいがちな失敗が、着慣れた綿のTシャツを着ていくことです。普段着としては優秀な綿ですが、登山においては控えたほうがいい素材とされています。なぜなら、一度濡れると乾きにくく、体温を奪うからです。
登山中は大量の汗をかきますが、綿は水分を保水したまま冷たくなり、それが肌に触れ続けることで急激に体温を下げる汗冷えの原因になります。
登山ウェアには、以下のどちらかの素材を選びましょう。
- 化学繊維(ポリエステル等)
吸汗速乾性に優れ、安価で丈夫 - メリノウール
天然の調湿機能を持ち、汗冷えしにくく防臭効果が高い
木元康晴
山岳ライター
一般的に、標高が1,000m上がるごとに気温は約6℃下がるとされています。さらに、遮るものの少ない尾根では風が吹くことが多く、一般的に風速1m/s増すごとに体感温度は約1℃低下するといわれています。
したがって標高の高い山では、真夏でも寒さを感じることが少なくありません。寒さ対策としては、保温性の高いウール素材のウェアを選択肢のひとつとして検討すると良いでしょう。
服装の基本レイヤリング
登山の服装は、それぞれ異なる役割を持つウェアを3つのレイヤーとして重ね着し、状況に応じて体温調整を行います。
- ベースレイヤー・肌着
・肌に直接触れる層
・汗を素早く吸い上げ、肌をドライに保つ
例)速乾性のある化繊、ウール - ミドルレイヤー・中間着
・保温性を確保する層
・通気性と保温性のバランスが良いものを選ぶのがよい
例)中厚~厚手のシャツ類、ジップTシャツ - アウターレイヤー・殻
・一番外側に着る層
・雨や風、雪などを防ぎ、内側の熱を守る
例)レインウェア、ウィンドブレーカー
この3層を脱ぎ着することで、「歩いている時は涼しく、休憩中は暖かく」保つことが登山の基本テクニックです。
木元康晴
山岳ライター
基本的には、ベースレイヤーの上にミドルレイヤーを着て行動します。風が吹いて寒さを感じたり、雨が降ってきたりしたときは、速やかにアウターレイヤーを着用しましょう。
さらに寒いときには、フリースや薄手のダウンをミドルレイヤーとして追加することもあります。一方、とても暑い真夏の樹林帯では、ベースレイヤーのみで行動しても良いでしょう。
動きやすいパンツと靴下の重要性
トップスだけでなく、ボトムスや足元の装備も重要です。
ズボンは、ジーンズやチノパンのような硬い綿素材は避けましょう。足が上げにくく、濡れると重くなって歩行の妨げになるため、伸縮性のあるストレッチ素材の化学繊維パンツを選ぶことで、岩場や段差も楽にクリアできます。
また、靴下は必ず登山専用のものを選んでください。一般的な靴下よりも厚手でクッション性があり、足裏への衝撃を和らげたり、靴擦れやマメを防いだりする機能があります。ウール混紡のものなら、蒸れも軽減してくれます。
木元康晴
山岳ライター
登山は長時間歩き続ける運動です。動きやすいパンツを着用することで、疲労感を大きく軽減できます。日焼けや虫刺されを避けるために、ロングパンツを選ぶと良いでしょう。
また、グリップ力とフィット感の高い靴下を履くことで、靴の中で足がずれにくくなります。快適に歩きやすくなるだけでなく、足元のトラブル予防にもつながります。
最初に揃えるべきアイテムの選び方
数ある登山用品の中で、最も優先して投資すべきアイテムは登山靴、ザック・リュック、レインウェアの3つです。
これらは三種の神器とも呼ばれ、登山の安全性と快適性を左右する最重要アイテムなので、しっかりとした専用品を選ぶことをおすすめします。
登山靴|足首を守るミドルカット・ハイカット
スニーカーと登山靴の最大の違いは、ソールの硬さと足首の保護です。山道は石や木の根でデコボコしており、柔らかいスニーカーでは足裏が痛くなりやすく、捻挫のリスクも高まります。
初心者には、以下のタイプがおすすめです。
ミドルカット〜ハイカット
足首まで覆われているため、捻挫を防ぎ、砂利の侵入もブロックする- 防水透湿素材
ゴアテックス等の素材を選ぶ
水たまりや急な雨でも中が濡れにくい
サイズ選びのポイントはつま先に1cm程度の余裕があることです。下り坂で足が前にズレた際、爪が当たって痛めるのを防ぐためです。厚手の靴下を履く前提でサイズを選んでみましょう。
木元康晴
山岳ライター
登山靴には、歩きやすさに加えて、鋭利な岩や障害物から足を保護する機能も求められます。さらに、足首まで覆うミドルカットやハイカットの登山靴は足首をサポートし、不整地でも安定して歩きやすくなります。
軽さに注目しがちですが、登山ルートや目的に応じて、十分な耐久性とサポート性を備えた登山靴を選ぶことが大切です。
ザック、リュック|日帰りなら20~30Lを目安に
登山用ザックやリュックは、荷物を軽く感じさせる工夫が詰まっています。
最大の特徴は、しっかりとした腰ベルトがあることです。肩だけでなく腰骨で荷重を支えることで、長時間の歩行でも肩が痛くなりにくく、体力を温存できます。
容量の目安は以下の通りです。
- 20L〜30L
日帰り登山に最適
雨具、防寒着、お弁当、水などが余裕を持って入る - 30L〜40L
山小屋泊や、調理器具を持っていく場合に
初心者の最初の一つとしては、汎用性の高い30L前後がおすすめです。
木元康晴
山岳ライター
ショルダーベルトが細かったり薄かったりすると、肩に食い込んで負担になりやすくなります。ウエストベルトも細いと、荷重を腰骨で支えることができません。
さらに、背面パッドが薄い場合は、中の荷物が背中に当たって不快感の原因になることがあります。
したがって、重さだけでなく、ショルダーベルトやウエストベルト、背面パッドのクッション性も確認して選びましょう。
レインウェア|上下セパレートの透湿防水素材
山の天気は変わりやすく、晴れ予報でも急に雨が降ることがあります。また、強風時のウィンドブレーカーとしても必須です。雨予報じゃないから要らないと油断せず、レインウェアも必ず用意しましょう。
コンビニのビニール合羽やポンチョは内部が蒸れやすく、汗で濡れてしまうことがあります。また、ポンチョは風にあおられて足元が見えにくくなる場合があるため、登山には不向きです。
必ず以下の条件を満たすものを選びましょう。
- 上下セパレートタイプ
動きやすく、足元までしっかりカバーできるもの - 透湿防水素材
雨は通さず、内側の湿気は外に逃がす素材
低体温症を防ぐ鍵になる
木元康晴
山岳ライター
透湿防水素材の性能は、数値で示されています。登山用のレインウェアでは、透湿性10,000g/m²・24hrs以上、耐水圧は10,000mm以上が最低ラインです。
通勤、通学向けのレインウェアでは性能が不足する場合もあるため、登山用途に適した製品を選びましょう。
色は明るい方が遭難したときに周囲から視認されやすいため、おすすめです。
あると便利!快適さと安全を守るアイテム群
三種の神器が揃ったら、次はより快適に、より安全に登るためのアイテムを揃えていきましょう。これらがあるだけで、疲労度やリスク回避能力が大きく向上します。
日差し・怪我対策|帽子・サングラス・手袋
山は標高が高いため、地上よりも紫外線が強烈です。日焼けや熱中症を防ぐために、帽子は必須アイテムです。全方位につばがあるハットタイプなら、首元のうっかり日焼けも防げます。また、目の疲労を防ぐためにサングラスもあると安心です。
そして、意外と忘れがちなのが手袋です。岩場や鎖場、木の枝を掴む際に素手だと怪我をする恐れがあります。軍手は滑りやすく濡れると冷たくなるため、フィット感の良いトレッキンググローブを用意しましょう。
スマホ対応モデルなら写真撮影もスムーズです。
木元康晴
山岳ライター
標高が高い場所では、UV-B(紫外線B波)を含む紫外線量が増えるため、日焼け対策が欠かせません。しっかり日焼け止めを塗りましょう。
曇りの日でも紫外線の影響は受けるため、油断は禁物です。サングラスは紫外線カットタイプを用意しておくと安心です。
手袋や長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を抑えることで、紫外線対策と安全対策を両立しやすくなります。
緊急時・疲労軽減|ヘッドライト・ストック
明るいうちに下山するから大丈夫と思っていても、道迷いや怪我で予定より時間がかかり、日が暮れてしまうことは誰にでも起こり得ます。
山の日没は真っ暗闇なうえ、スマホのライトでは足元しか照らせず、片手が塞がるため危険です。両手が空くヘッドライトは、ザックの底に必ず入れておくべきお守りです。
また、トレッキングポールがあると、足への負担を腕に分散でき、登り下りのバランスが取りやすくなります。特に膝への負担を減らしたい方におすすめです。
木元康晴
山岳ライター
山で日が暮れると周囲が暗くなり、安全な行動が難しくなります。ヘッドライトは安全確保のための必携装備です。忘れずに持参しましょう。
ストックはバランス維持に役立つ一方で、使い方に慣れていないと転倒の原因になることもあります。取り出し方や折りたたみ方に加え、長さの調整方法も事前に練習しておきましょう。
登りは短く、下りでは長めにするのが基本です。
食料・水分|行動食と水筒の準備
登山は非常にエネルギーを消費するスポーツです。お弁当などの昼食とは別に、歩きながらすぐにエネルギー補給ができる行動食を用意しましょう。チョコレート、ナッツ、ゼリー飲料、羊羹など、高カロリーで個包装されたものが適しています。
水分補給には、軽量で丈夫なプラスチックボトルや、チューブで歩きながら飲めるハイドレーションシステムが便利です。こまめな水分補給は、バテ防止や高山病予防にもつながります。
木元康晴
山岳ライター
甘いものに含まれる糖質は、比較的速やかにエネルギー源として利用されます。
一方、ナッツ類は消化に時間がかかるものの、エネルギー補給効果が比較的長く続きます。そのため、両方を用意しておくのがおすすめです。
大量に汗をかくと、体内の電解質も失われます。水分補給に加えて電解質の補給も意識しましょう。スポーツドリンクを携行しておくと安心です。
出発前に確認!登山のマナーと注意点
装備が整ったら、いよいよ出発です。
しかしその前に、山に入るための心構えとマナーを確認しておきましょう。これらを知っておくことは、自分自身の安全を守るだけでなく、他の登山者や自然への配慮にもなります。
登山届の提出と山岳保険
どんなに低い山であっても、遭難のリスクはゼロではありません。万が一の際に迅速な救助活動を行ってもらうため、登山届は必ず提出しましょう。
登山口にあるポストへの投函だけでなく、現在はコンパスやYAMAPなどのアプリからオンラインで簡単に提出できます。
また、警察や消防だけでは対応できず、民間の救助、捜索団体による捜索が必要になった場合、高額な費用がかかる場合があります。
1日から数百円で加入できる山岳保険やハイキング保険に入っておくと、金銭的な不安を軽減できます。
木元康晴
山岳ライター
熟練の救助隊員であっても広い山の中から遭難者を探し出すのは困難です。登山届を提出しておくことで捜索範囲を絞り込みやすくなり、迅速な捜索につながります。
山岳保険は、山での捜索、救助にかかる費用を補償する保険です。
旅行保険などでは山岳遭難時の捜索、救助費用が補償対象外となる場合があるため、事前に補償内容を確認しておきましょう。
ゴミの持ち帰りと挨拶のマナー
山にはゴミ箱はありません。お弁当の容器やペットボトルはもちろん、飴の包み紙一つに至るまで、自分の出したゴミは全て持ち帰るのが鉄則です。ビニール袋や密閉できるゴミ袋を持参しましょう。
また、山ですれ違う登山者には「こんにちは」と挨拶を交わしましょう。気持ちよくすれ違うためだけでなく、挨拶をすることで相手の記憶に残り、万が一遭難した際の重要な目撃情報になるという安全上の意味もあります。
木元康晴
山岳ライター
食べ物のニオイがついたゴミはクマやサルなどの野生動物を引き寄せる原因になることがありますので、必ずザックの中に入れて持ち帰りましょう。飴の包み紙などをポケットに入れたまま落としてしまうこともあるため、注意してください。
道が狭い場所ですれ違う際は一般的には下る人が立ち止まり、登る人に道を譲ります。ただし、安全に待機できる広い場所が近くにある場合は、状況に応じて譲り合うようにしましょう。
まとめ
今回は、登山初心者が揃えるべき持ち物と装備の選び方について解説しました。
登山は準備が8割と言われるほど事前の装備選びが重要です。まずは命を守る三種の神器をしっかりと選び、ウェアなどは手持ちのスポーツウェアやプチプラアイテムをうまく組み合わせてみてください。
最初から全てを最高級品で揃える必要はありません。山に登る回数を重ねながら、「もっと軽いものが欲しい」、「こんな機能が欲しい」などと、少しずつ自分好みのギアを買い足していくのも登山の大きな楽しみの一つです。
楽天市場には、初心者向けのセットからプロ仕様のギアまで、豊富な登山用品が揃っています。ぜひ、次の週末に一緒に山へ行く相棒を見つけてみてください。
木元康晴
山岳ライター
一通り装備を揃えたら、まずは近くの山を登ってみましょう。山で実際に装備を使用することで、使い勝手や改善点を確認できます。
そのように経験を積み重ねていくことが、登山の安全につながります。目標とする山の難易度を少しずつ上げながら、それに合わせて装備も充実させていきましょう。
※本記事は楽天市場が作成しています。